【インタビュー】株式会社ロコンド/田村淳氏・長谷川貴之氏 - 大切にしたのは啓蒙。理解がないと、ルールが増えて、不満につながる(1/2ページ) - Widge Media

【インタビュー】株式会社ロコンド/田村淳氏・長谷川貴之氏 - 大切にしたのは啓蒙。理解がないと、ルールが増えて、不満につながる(1/2ページ)

記事紹介

2017年3月7日に東証マザーズへ上場を果たした株式会社ロコンド
IPOへ導いた同社の精鋭チームに、これまでの足跡と今後の抱負を伺った。

※インタビュアー/株式会社Widge ゼネラルマネージャー 山岡直登

<上場準備の開始~推移>

本日はお時間を頂きありがとうございます。早速ですが、IPO準備取り掛かり時期についてお伺いさせてください。

田村:長谷川さんが入社したのが2014年の12月ですよね?

長谷川:そうですね。

田村:その前からIPO準備は進めていたものの、その時は、利益がほとんど出ていなくて、直前期をいつにするかという議論をしている時期でした。それまで証券会社とは3~4社と同じような距離でお付き合いをさせて頂いていて、主幹事を決めたのが2014年の8月ですね。

それまではIPO準備は水面下で進めていたのですか?

田村:2011年の2月に期首残高監査を実施していて、監査法人はその頃からずっと入っていましたし、内部管理体制についても概ね整備していたので、内部管理体制としてはいつでも進められる状況になっていたかと思います。あとは売上・利益をしっかり出す事と、予実管理の精度を上げるという状況でしたね。

取締役兼管理本部ディレクター 公認会計士 田村淳氏

2011年の当時のメンバー構成を教えてください。

田村:当時は私と、経理2名、人事1名、総務1名の組織でした。それと、弊社が返品・返金が特徴のビジネスモデルなので、返金担当も1名いました。

当時は皆、上場企業での経験や、IPO準備の経験が無かったので、申請書類の作成や監査法人などの外部交渉は、私が対応していました。

2011年から主幹事を決めるまでの期間、IPO準備の進捗について教えてください。

田村:そうですね、最初の取り掛かりは、内部監査の実施と規程の整備、あとは常勤監査役がいなかったので、その辺りをまずは対応しました。

これらは最低1年間の運用期間が必要で、いつでも上場申請できる状態にもっていくため、まず取り掛かりました。

当時上場準備経験のある方は田村さんだけだったとのことですが、この辺りも田村さんがほぼお一人で対応されたのですか?

田村:はい。ただ、当時はまだ会社規模としても所帯が小さくて、ビジネスモデルもそんなに複雑ではなかったので、あまりマンパワーはかからなかったんですよ。それに、規程類は外部にも手伝って頂いていたので、一人で何とか回せていました。

規程は、規程間の整合性を取るのが大変なので、最初は外部にお願いし、変更があるたびに社内でリバイスしていったという感じですね。

2014年12月に長谷川が入社してからは、いろいろなタスクを任せられたので非常に助かりました。

長谷川:ありがとうございます。そう言って頂けるだけで嬉しいですね。

経理担当アソシエイトマネージャー 長谷川貴之氏

2011年当初は、いつ頃の上場を目指していたのですか?

田村:当社は株主のほとんどがファンドでしたので、ファンドの期限も念頭においてに、なるべく早めにということでは動いていました。

具体的にはターゲットを2016年末ということで動いていましたね。

なるほど。そして2014年に主幹事が決まり、本格的に動き始めたわけですね?

田村:実は主幹事が決まったタイミングでも、まだ資金繰りが厳しい状況で、そこから少し経って2015年10月に初めて単月黒字になりました。それまではVCから資金調達をして、なんとか繋いでいた状況でした。

そして単月黒字になったタイミングで証券会社にも本腰を入れて頂いて、しっかりと動き出したという感じです。

やはり業績では苦労されたのですね。

田村:そうですね。当時は「そもそも靴の返品ってビジネスとして成り立つのか?」という世間の声もあり、お取引先様も最初は懐疑的だったんですよ。商品を入れてくれないこととか、同業他社からのバッシングもあったりしましたね。

でも黒字化のリリースを出してからは、風向きが大きく変わったような気がします。

<コーポレート組織の変遷> 

上場に至るまで、コーポレートチームの組織はどのように拡大されていったのですか?  

株式会社Widge ゼネラルマネージャー 山岡直登

田村:そこまで大きくは変わっていないよね?

長谷川:そうですね。日々のルーティン業務は各メンバーに任せて、基本的にIPO準備は田村と私と常勤監査役の3名で進めていました。

田村:もともと内部監査室長だった者が、常勤監査役に就任しました。そして内部監査は私が兼務という体制にしました。

CFOが内部監査ですか?

田村:通常ですと、内部監査は専任で配置するケースが多いと思うのですが、弊社の場合、内部監査といっても、業務ボリュームが少なかったので、だいぶ手が余ってしまう状況でした。

そういう状況の中、そもそも専任を置く必要があるか?という「そもそも論」から議論をしました。この辺りは、代表・田中のポリシーですね。

結局は内部監査人という人が必要なのではなく、内部監査という機能が必要なのであり、兼任でもちゃんとルールを守っていれば問題がないとの判断で、兼務になりました。無駄をそぎ落とした少数精鋭組織を作ろうという方針でしたので。

なるほど。いかにコンパクトな組織にするかということですね。

田村:そうですね。証券会社や東証からもCFOが兼務をするということ自体には何も指摘がなかったので、問題はなかったですね。

御社にとってはCFOが内部監査も兼務するという選択が良かったということですね。

田村:結果的にはそうでしたね。

単月で黒字化された2015年10月からのIPO準備において、それぞれの業務範囲を教えて頂けますでしょうか?

田村:私の場合、営業、物流、マーケティング等のオペレーション以外のことは、ほぼ全てという感じですね。経理・財務以外の人事・法務・総務といった管理部門はもちろん、IPOに関連する業務は全て絡んでいましたし、ファイナンス・経営企画に関しても代表の田中と対応をしていました。

その他、事業以外の課題もスポットで出てくるので、その辺り対応など、多岐に渡りますね。

開示の担当も田村さんですか?

田村:開示は私と長谷川で対応していました。開示のところは、以前からフォーマットを作成していました。Wordで作成したものを毎年リバイスしていましたので、いつでも開示できる状態にしていました。

長谷川:もともと田村が作りこんでいるものがあったので、非常に助かりましたね。

以前よりご準備されていたのですね。

田村:そうですね。フォーマットだけ作ってしまえば、あとはリバイスするだけなので。最初の作りこみは大変でしたけどね(笑)。そして、最終的に印刷会社のフォームに載せるのは、長谷川がメインで対応しました。

当時の長谷川さんのミッションはいかがでしょうか?

長谷川:ルーティン業務としては、決算業務含め、経理面の実務とマネジメントが中心でした。その他、開示や監査対応・証券対応などは、田村と一緒に入って対応していましたね。あとは、当時四半期レビューが初めて入った時期でもあったので、その辺りも対応していましたね。

そうでしたか。お話を聞く限り、2015年に上場準備が本格化したタイミングで特別なことはされていないようですね。

田村:そうですね。いま振り返ると、準備が本格化したからといって、特別にやったことは無かったかもしれないですね(笑)。

経理もそうですし、労務管理や規程整備、開示に関しても、毎月改善しながら積み重ねていくことですから、その土台を早い段階で作れていたというのは大きかったかもしれないです。

地道に土台作りをしていたために、特別なことをしなくて済んだということなのですね。少し話が変わりますが、それまで業績がとても厳しい状況にあった中、なぜ「ロコンドへ入社をしよう」という思いに至ったのですか?

 

田村:私は前職の監査法人時代に、IPO支援業務を手掛けていました。そして、次第に外から数字を見るよりも、事業会社の中に入って貢献したいという思いになって、たまたま当社と出会いました。

いつ頃のご入社なのですが?

田村:入社したのは2011年の10月です。最初はしばらく休んでリフレッシュしようと思っていたのですが、代表の田中に「来週から来てくれないか」と言われ、予定をキャンセルして入社しました(笑)。

だいぶ厳しい時期だったのでは?

田村:そうですね。正直、入る前は業績のことは知りませんでした(笑)。もちろん非上場なので業績も開示していないですし。

入社して最初に月次試算表を見たときは、だいぶ驚きましたね(笑)。

そうでしたか(笑)。

田村:資金繰りが大変で、キャッシュの心配をしながらの日々でしたね。

ちょうどラウンドAの資金調達が終わったタイミングでしたけど、その後4回くらい調達をするのですが、ずっとキャッシュアウト先行が続いていましたからね。

長谷川さんはいかがですか?

長谷川:前職を辞めた後に、少しリフレッシュ期間を経て、転職活動をしたのですが、最初にオファーを頂いたのがロコンドで、そのまま入社を決めました。

私も、入社後に決算書を見て業績は良くないなと思ったのですが、資金調達は順調に進んでいたので、まあ大丈夫でしょうとポジティブに考えていました(笑)。

業績が厳しい状況の中でも頑張ってこられた理由はどの辺りにあったのでしょうか?

田村:私は、このビジネスモデルは成功すると思っていましたから。アメリカや欧州では既にこの分野で成功している会社があるということを知っていたので。

「時間がかかったとしても絶対に成功する」と考えられていたことは非常に大きいですよね。

まあ、それとは別に、キャッシュがそこまで持ちこたえてくれるかは心配でしたけど(笑)

長谷川さんはいかがですか?

長谷川:業績が厳しい時期といっても赤字の期間を過ごしたのは1年弱ですし、毎月の業績も前年比プラスで推移していたので不安というのは、あまりありませんでした。その中で、IPOが実現するときに立ち会えることを期待して頑張っていました。