【インタビュー】株式会社ほぼ日 - ハードワークを支えた「助け合いの精神」を醸成できた背景とは?(1/2ページ) - Widge Media

【インタビュー】株式会社ほぼ日 - ハードワークを支えた「助け合いの精神」を醸成できた背景とは?(1/2ページ)

記事紹介

2017年3月16日に東証JASDAQへ上場を果たした株式会社ほぼ日
IPOへ導いた同社の精鋭チームに、これまでの足跡と今後の抱負を伺った。

※インタビュアー/株式会社Widge ゼネラルマネージャー 山岡直登

<上場準備の開始~推移>

本日はお時間を頂きありがとうございます。早速ですが、IPO準備の取り掛かり時期についてお伺いさせてください。

趙:本格的に動き始めたのは2014年頃なのですが、実はもっと前、2007年頃から水面下では動いておりました。2007年に社内で上場に向かって動くという話が出まして、それまで管理部の組織さえなかったので、管理体制を整えようという動きになりました。管理部人員の採用や、従業員持ち株会の立ち上げ、諸規程の整備、常勤監査役の招聘など、内部管理体制を徐々に整えていきました。

人事・総務 趙啓子氏

そんなに前から動き始めていたのですね。当時のコーポレートチームはどういった体制だったのでしょうか?

趙:初期メンバーは、総務1名、経理2名という体制でした。2007年に積極的に採用を開始し、CFOとして篠田が参画。経理は田中ともう1名、総務に太田(現在経営企画)が入社したので、その時点で8名の組織となりました。私は当時産休をとっていたのですが、田中、太田の入社と同じ時期に人事担当に着任しました。

田中さんと太田さんは当時どういったミッションだったのですか?

経理 田中朋子氏

田中:IPOに向けて準備をしているということは入社前に聞いていたのですが、当時はまだ在庫管理やお金の管理もままならない状態であったので、IPO準備業務がメインというよりは、システムを導入して、それぞれの業務フローを整え、社内に周知するというのがメインのミッションでした。まずは会社としてしっかりと業務をまわせる状態にしなければならないフェーズだったと思います。

太田:私は、総務として入社をしたのですが、篠田と一緒に経営企画業務に携わるようになりました。予算もない時代だったので、それぞれ商品チームごとに予算をつくるところから始めましたね。

商品事業部・IR担当 太田有香氏

田中:IPOコンサルタントと監査法人にもこの頃から入って頂き、会計監査を始めたタイミングです。証券会社もこの頃からお付き合いが始まっていました。

なるほど。その頃から外部との接点も設けられていたのですね。本格的に動き始めたのが2014年とのことなので、だいぶ時間をかけながら進めてきたという印象ですね。

趙:そうですね。いくつか理由はあるのですが、内部管理体制の土台がほとんどない状態からのスタートだったので、一般の会社よりも時間がかかったということは言えると思います。

また、上場したいという思いはあったものの、本当に上場が会社の選択として正しいのかという経営判断も含めて、じっくりと基盤を固めている時期でした。

2014年に本格的に始動をされた際、何かきっかけはあったのでしょうか?

株式会社Widge 山岡直登

田中:私の見解としては、ようやく会社としての基盤が出来上がってきたタイミングでもあったので、代表・糸井の「上場したい」という気持ちに、体制が追い付いたということは言えると思います。

井澤:その少し前が、ポーター賞に応募をしたタイミングで、会社の事業戦略や仕組みを篠田が一人で分析してまとめたんですよ。そして改めて会社の仕組みを理解したときに、「やはり上場するべきだ」という判断になったんですよね。

経理 井澤知士氏

趙:そして、2014年12月に管理部メンバーが集まって上場に向けての戦略合宿を実施しました。丸一日じっくりと話し合いましたね。

どういった内容の合宿だったのですか?

井澤:主に以下のような内容を議論しました。

  • これまでの管理部門の歴史や経緯の共有
  • 今の管理部門体制の課題と、どういう人材を何名採用するかなどの採用戦略
  • 上場に向けての課題の洗い出しと共有 ・直前期、申請期でやらなくてはいけないことの共有 ・担当業務の振り分け

田路:大きなカレンダーを壁に張って、各担当のToDoリストを作り、誰が何をやるかをポストイットで張っていって決めましたね。

経理 田路修平氏

中原:社内用のサイトを立ち上げて、糸井の上場への考えや、これまで管理部の仕事がどのように整っていったか、またそれぞれが入社した時に管理部の状況がどうだったか…などの記事を書いてアップして、社内に共有していくというようなことをしました。

経理 中原真理子氏

なぜそういうことを?

田中:他社さんにお話を伺った際、IPOの準備過程で事業側との間に壁ができて、管理部門が孤立してしまうということを聞いていたので、いろいろと共有していくツールを作っていました。

趙:内容としては苦労話も多かったので、それを見た社長が「こんなに辛い思いをしていたのか…」と胸を痛めていたこともありましたね(笑)。

田路:私は入社して間もなかったので、他の人達が在庫管理のことや人事関連のことなどを記事にしている中、「入社しました!」くらいしか書くことがなかったんですよ(笑)。やるせなかったです…(笑)。

 

コーポレート側の仕事内容や苦労話はなかなか共有できる場がないので、社内でこういった取り組みをされるのは素晴らしいですね。

趙:結果的には本当に良かったと思います。採用に関しても、合宿で方針を固めて年末から募集を開始しました。そして2015年のGW前後に、樋口、菊地、小竹の3名が入社しましたね。

2014年~2015年にかけてのIPOに向けた動きと、各担当業務を教えてください。

趙:まず、直前期のタイミングを決めました。その後、常勤監査役に就任して頂くことから始まり、2014年に決算期を3月末から8月末に変更をしました。決算期変更をこのタイミングで行ったために、直前期のタイミングも5ヶ月遅れることとなりました。この5ヶ月間の間に、決算を行い、そして先ほど話にあった管理部合宿を行って採用を行い、2015年から、新たに人を迎えて具体的に各担当の業務を対応していったという流れです。

井澤:経理に関しては、決算など通常の経理業務をメインにする担当と、上場準備をメインにする担当とに分けました。私個人としては、主に適時開示を含む開示資料作成などに携わりました。

田中:私はワークフローの整備やシステム導入などを主担当で対応していました。ある程度の体制は整えていたものの、まだ申請フローなどが紙でのやり取りであったり、その他フローもアナログで属人的な面が多く、決算の締めも20日かかっていました。いろいろな事業も立ち上がる中で、会社の成長スピードに追い付いていなかったため、決算早期化なども見据えて、システムの入れ替え準備を行いました。

田路:私は、内部管理強化をミッションに、田中と協力しながら、四半期決算実現のための業務フロー見直しや改善等を担当していました。その後、2016年はJ-SOXを主担当で対応しました。

樋口:私と菊地と中原が、日常経理から決算などルーティンの業務を分担して担当していました。

経理 樋口理恵氏

太田:私は予算関連です。代表の糸井が「うちは予算がない会社です」と謳っているような会社でもあったので、まさに一からでしたね。そもそも予算という概念がない風土の中で、各事業部とミーティングをしながら、予算策定の必要性や予算をつくるところから始めました。

小竹:私は2015年6月に入社したのですが、元々社歴が長い総務の担当の方がおり、その方が規程類などの上場準備業務を担当していて、私と趙で労務管理や採用まわり、その他人事総務に付随する業務を分担して対応していました。

人事・総務 小竹由佳乃氏

趙:労務管理のフローは2007年からある程度は整っていたので、日々の業務をしっかりと回すことがミッションでしたね。

倉持:私は2016年入社なのですが、糸井の秘書業務を中心に、経営会議などにも参加して、多忙な糸井のサポートを中心に行っていました。また、毎日、糸井に関連するスケジュールや依頼内容、上場に向けてどういったことを糸井が対応しているのかなどを社員全員にアウトプットすることも仕事の一つでした。

秘書 倉持奈々氏

<コーポレート組織の変遷>

上場に至るまで、管理部門の組織はどのように拡大されていったのですか?

趙: 先ほどお伝えした2014年12月の合宿を経て、主要メンバーが集まり、それが今の体制になっているため、大きくは変わっていないですね。

産休で一時期抜けたメンバーは何名かおりましたけど。経理でいうと中原ですね。

中原:はい、2015年11月に産休に入って、2016年4月末に復帰したので約半年は休ませて頂いていました。本当はもう少しゆっくりしたかったですけど(笑)。

全員:(笑)!

趙:総務人事でいうと、2007年から総務の中核として上場準備を進めていた者が、2015年12月に産休に入りました。その時は、上場準備の過渡期ということと、その者がメインで対応していたものが多かったので、引き継ぎなどがだいぶ大変でしたが、幸い、小竹が前職で上場準備の経験があったので本当に助けられました。

その方が産休に入られて、小竹さんのミッションはだいぶ変わったのですか?

小竹:そうですね。日々のルーティン業務に加えて、上場準備に関しても引き継ぐことになったので。加えて、その時期に本社移転や社名変更も重なっていたので、ほとんど息継ぎする間もない感じで毎日が過ぎていきました。特に本社移転は前職でも経験がなかったので、右も左も分からず進めていったという感じです。

総務人事はとても大変な時期でしたね。経理チームはいかがでしたか?

井澤:2016年は、今まで以上に証券会社が本腰を入れ出した時期で、上場するための指摘が増える中で、5月頃にJ-SOXの対応が必要だということが判明したんですよね。それまで何も準備ができていなかったので、田路が中心となって急いで動き始めたのを覚えています。

田路:当時、やらなきゃいけないことは分かっていたものの、監査法人さんからのお話では緩めだったので、このままの状態でも問題ないのかもしれないと考えていたんですよ。ところが、急遽、現状のままじゃ審査上難しいと証券会社に指摘され、急いで動いたという感じですね。

そういった状況だったのですね。

田中:加えて、その頃は、翌期(2016年9月)からの基幹システム導入に向けて、会社に合うようにシステムをカスタマイズする時期でした。当時は、システムを作っている間にもいろいろな事業や取り組みが広がっていたので、その度にシステムをカスタマイズする必要があり、最終版まで固めるのにだいぶ時間がかかりました。

その結果、テスト期間がわずか1ヶ月で導入するという強行手段を取らざるを得ない状況になったんですよ…(笑)。

テスト期間1ヶ月でうまく運用できたのですか?

田中:いえ…(笑)。やはり短期間ではテストが不十分だったので、いろいろと不具合が出てしまいました。月次決算はもちろんですが、年度末の決算とも重なったので、経理メンバーは地獄でした…(笑)。

樋口:そうでしたね(笑)。バグが出た数千件のデータを手動で直す作業とかしていましたもんね(笑)

田路:ひたすらみんなでカタカタEnterキーとDeleteキーを押していたような…(笑)。

井澤:締め日の関係で、その日に出た不具合はその日中に直さなければいけないと、田中からの指令が飛んできましたので、みんなでだいぶ遅くまでやってましたね(笑)。

菊地:データ上で、下から消す人、上から消す人と、分担までして、最後中央で徐々に寄っていってやっと終わるという、謎の共同作業でしたね…(笑)。

経理 菊地俊介氏

田中:普段は部署に関係なくくじ引きで席を決める席替え方式なので、管理部門メンバーはバラバラに座っているのですが、さすがにその時は固まって座って、みんなで集中してやろうと(笑)。遅い時間までカタカタひたすらEnterとDeleteを無言で押し続けていたので、まわりの社員は怖がっていましたよ(笑)。