Interview

インタビュー

株式会社アイスタイル 取締役 兼 CFO 菅原敬氏

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 菅原さんを引き寄せた力は大きかったんじゃないですかね。

まぁ、創業者二人の苦労も見ていましたしね。創業準備から創業直後は、(アクセンチュアに勤務していたため)いわゆる手弁当で毎晩手伝っていて、その後もたまに様子も見ていたので…。それで、もう倒産か、チーム体制にして頑張って持ち直すか、極論この二択だったんですよ。なので、やはり何とかしないとという思いが強くて。

 最初に取り掛かったことって何だったんですか?

僕が最初に担当したのはエンジニアリングチームの改革ですね。当時のエンジニアリングチームは、社内の下請け工場のような立場で、、頑張っても評価されないっていう位置づけで。これをエンジニアリングチームがサービス開発を引っ張るようにしたくて。会社の成長のボトルネックもエンジニアリングのキャパシティにあったので、そこの改革は必要でしたね。

 その課題は、長らく経営側として把握されていたのですか?

まず5人の経営チーム体制になった時に合宿を行ったんですよ。奥湯河原のものすごく安くて汚い温泉宿でしたけど(笑)。いろいろと改革プランのようなものを作っていて、その中で出てきたことの一つですかね。
その後、子会社の立ち上げと経営も任されていたので、しばらく兼務で推進していましたね。

 子会社は2社ですよね。

そうですね。タイミングは異なりましたけど。まず1社目はアイスタイル・マーケティングソリューションズといって、今でいうビッグデータ的なサービスを行っていた会社だったんです。3年くらいやってギリギリ採算ラインまでクリアしたんですが、労働集約型のモデルでそこからの成長が難しくて、最終的には本体に吸収合併しました。

そして2008年からまた3年くらい、コスメ・コムというECの会社の代表をやっていたんですが、こちらはもともと事業部だったんですね。一つの部門としてはまずまずの状態だったんですが、販管費などの共通コストがあまり分解されていなかったので、どれくらい利益が出ているか分からなかったんですよ。それで、いっそのこと分社化しようと。
ふたを開けてみると、やはり営業利益率がマイナス二桁%だったんです。でも諸々テコ入れをして、2年目で黒字化にできて、3年目からは営業利益率が10%くらいになって…。

 ポイントは何だったのですか?

意識したのはKPIマネジメントですかね。ECは数字の世界なんで。あとはラグジュアリーを含めたブランドの誘致などを積極的にやりましたね。セールスは苦手じゃないので(笑)。

 そうですか。
経営者としてもそれなりの成果を出して、その後CFOの領域に入っていくわけですよね。
きっかけはIPOですか?

そうですね。開示担当取締役が必要だということだったので。金融機関の方々との対話なども含めて消去法で「菅原がいいかもしれない」ということで、決まったんです。そこからコスメ・コムは別会社の社長をやっていた佃にお願いして、僕は本格的にCFOとして業務を進めることになりました。

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「経営管理部」ですね。増田と、経理2名・法務1名・人事2名の6名組織でした。経理も1名が正社員で1名がアルバイトという組織。これがそのままIPO準備チームでした。

 当時の全従業員数はどれくらいだったんですか?

直接雇用で130名ほどですかね。

 全社中の管理部門比率は、ややコンパクトでしたね。

そうですね。結構小さ目だったと思います。

 その体制で無事にIPOをされ、そして東証一部への市場変更も早かったですよね。

全てはメンバーの頑張りです。僕はスペシャリストにはなれないので。

 経営・事業を経験されている(事業創造型の)CFOはそこまで多くないと思います。

よくそうおっしゃって頂く機会はあるんですが、まだまだだと思っています。何とか、恥じないように、とは思ってやっていますが(笑)。

 そのようなお立場として、今までで一番苦しかった時を挙げるとすると、どの時ですか?

僕個人として苦しいって思う時はほとんど無いんですが、挙げるとすると、例えばコスメ・コムの赤字の時なんかはそうですよね。メンバーも朝早くから夜遅くまで皆がんばっていて、でも赤字だから評価を付けてあげられなかったんですよ。昇給もしてあげられないし、賞与もあげられないし…。やっぱり本当に心苦しかったですよね。

あとは、2005年に結構大きな改革をしたんですけど、その時もですね。2004年の売上が6.6億円で、利益がマイナス5000万円くらい。倒産するというレベルではなかったんですが、大幅な改革の必要性もあって、結果的に何名か退職せざるを得ない状況になってしまって…。当然こちらからそういった声を掛けなければならない場面もあったんですけど、やはり前の晩は眠れませんでしたよね。健全な組織にするためには通らなければならない道でもあったので、心を決めて話をしていましたが、気持ちとしてはやはり辛かったですよ。

 そうですか。やはりこういった一面でも、「経営者」としての側面が出てきますね。

結果的にはですね。

 そういった諸々の改革があって、徐々に組織も固まってきたというわけですね。

そうですね。だんだんと「アイスタイルらしさ」というものができてきたように思います。

 何かフィロソフィのようなものもあるのですか?

7つの「i」と書いて、『7i』というのがあるんですよ。簡単にいうと、限界をつくらず楽しみながら、想像力や英知をもとに、業界に新しい改革をどんどん吹き込んでいこう!というようなメッセージなんですが、どの「i」も、アイスタイルにとって大切な「i」なんですよね。

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 菅原さんから見た「アイスタイル」という会社は、どんなイメージですか?

地味だけど決して諦めない会社ですかね(笑)。インターネットという非常にスピードの早い業界と、美容業界という非常に歴史がある業界の、双方に関係を置いているので、バランスをとりながら前に進んでいるようなイメージなんですよ。業界に新しいイノベーションを吹き込んで、生活者中心の市場を創造するということをミッションにしているので。
まぁ、派手さはないですよね(笑)。

 そんなことないと思いますけどね(笑)。

どちらかといえば地味ですよ(笑)。地味だけどしぶといというか…。少しでも多くの方に、うちの試みを理解して頂くように地道に頑張っています。まだまだこれからですね。

 そうですか。菅原さんの立ち位置も徐々に変化してきているような気もします。

そうですね。今は社長室ですからね。基本的には海外をメインとした新規事業開発や、業務提携・M&A・戦略投資などをやっていて、一方でアイスタイルキャピタルで純投資も行っています。

 今の立場で意識されていることって何ですか?

インプットをたくさんする年齢(キャリアステージ)でもないですし、単に、自分の担当領域で結果を出せば良いというステージでもないので、どれだけ複合的な形で社内外の周囲にアウトプット(give)することができるかということは、常に意識していますね。
当然まだまだインプット(勉強)もしなければならないですし、そうありたいんですが、それはもう陰でしなければならないと思っていて。

それ以上に、どれだけ僕から、(有形無形に関係なく)しっかりとしたものを与えられるかということの方が大切な気がするんですよね。人を育てるという観点でもそうですが、どれだけ周りの人達の成長に貢献することができるかということですよね。それがビジネスの場であってもなくても。

 菅原さんがそういう意識を持たれているということは、とても周囲の方々にとってもありがたいことだと思います。

他に、仕事をする上で大切にされていることなどございますか?

今、僕は社長としてやっているわけではないので、基本的に当社の代表である吉松が、自分の中で整理できていないものを、明確な形に落とし込んでいくためのパートナーという位置づけでなければならないと思っていますし、吉松がおぼろげながら興味を持っていることに対して、どれだけ(切り込み隊長的なポジションで)取っ掛かりを創れるかということは意識していますね。

できる限り、吉松が考えていることを感じようとはしていますし、そういうことは形式ばったところではなく雑談などから出てくることも多いので、何が本当に気になっていることなのかを察して、事前に調べたり対応をしたり、先回りしておこうという思いは持っています。

 菅原さんから見た吉松社長とは?

それを聞きますか(笑)。そうですね、無から夢を描くことができるクリエイティブな人ですかね。おそらく本人は左脳人間という思いを持っていると思うんですが、右脳も強いんですよ。
あとは、何だかんだ言っても愛される人ですね。

 それは昔からですか?

そうですね。昔から本当に人から好かれるという印象はありますね。

 長い付き合いという意味では、なかなか無い関係かと思いますが。

そうですよね。だからこそ逆に、吉松に対して言いづらいこともたまに言うんですよ。吉松ができていないことを言うのが僕の仕事だと思いますし、吉松が持てていない視点を持つのも僕の役割だと思っているので。それでたまに険悪な雰囲気になってしまう時もあるんですけど、それができなくなったら僕は役目を果たしていないことになると思っているんですよね。それができなくなった時は、やはり引き際かと思いますし。そういう意味で、吉松の良い参謀にならなければという思いですね。

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 とても良いお話ですね。
最後に今後のビジョンを頂いても良いですか?

会社のビジョンとしては、マーケットデザインカンパニーになると。生活者中心の市場を創造するような会社になっていくということを目標にしています。具体的には、ビューティー×ITで想起される世界最大の会社になろうということであったり。世界的な美容の総合プラットフォームになっていきたいので。

 個人的なビジョンはいかがですか?

まだアイスタイルで、ビジョンに向けて半歩も歩けていないので…。
今のポジションには全くこだわりが無いんですが、ビジョンに向けてはまだまだやっていきたいという思いが強いですね。やり切った感が全くないので。

 いずれご自身で一から起業をされるということはないですか?

それはないですね。僕たぶん起業家には向かないと思うんですよ(笑)。それは実際に雇われ社長を経験してみて分かりました(笑)。

 現状の延長線上として、引退後にはベンチャーのために何かされるということは、あり得ますよね?

引退したらですか?そうですね。特にインターネット産業はまだ歴史が浅いので、皆ペイフォワードの精神でやっていかないといけないと思うんですよね。そういう意味では、どういう形になるかは別として、インターネット産業で戦っていこうとする若い人たちの支援をするということは、将来やりたいことに近しいかもしれませんね。

 今45歳ですよね。あと10年はアイスタイルさんにいらっしゃいますかね。

いられるかな~(笑)。邪魔者になってまで居続けたいとは思わないですし、できることがあれば何でもやりますというスタンスですよね。僕が必要ないなと悟ったら自らいなくなるということは吉松にも伝えていますし。
本当に分からないですよね、将来は。まだやり切っていないっていう感覚しかないんです。だからしっかりと全うできるまで、精一杯頑張り続けますよ。

【終】

 

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